望診講座77 「鍼の響きについて」

目安時間8分

鍼をするとジーンとした感覚が伝わってくることを「響きがある」と表現します。

 

ただそれは中国鍼を刺入したときにおきるビリビリとした響きの事ではありません。

それは神経の反応であって、ここで言う「経絡への響き」とは区別します。

 

それは術者側の感覚で、気の響きだから患者本人はまったく感じていない事もあります。

 

その響きを切経で追っていきます。

するともう1点の出口とも言える点にたどりつきます。

 

そこからいろいろな事が考えられます。

 

これは師匠から教わったことですが響きを追った先の点(経穴)は禁灸点となります。

 

本当にそうなるのでしょうか?

 

じつは、何度か実験したことがあるのです。

 

師のいう禁灸点にお灸をした(してしまった!)。

 

すると、本当に悪化したんですね。

 

それも人によっては激烈に反応します!

 

そして、その禁灸点はその人、その時の症状によって出現場所が変わるんです。

 

その判断は「治療家の手」ができていないと無理だと思います。

 

それがどうしてだかはわかりません。

 

もしかすると、その点(経穴)は出口の役割をしているため、透熱灸で火傷をつくってしまうと気が塞がってしまうためかもしれないと考えています。

 

始めの頃は反応点を取り違えて、こういう事故を時々おこしていました。

 

反省するばかりです。

 

鍼の響きを考える

四診で証を決め、本治法を施していきます。

 

そこで重要なのは「鍼を響かせる場所」と「鍼が響いた場所」の2つです。

 

・・・?

 

その2つって何が違うの?いっしょじゃないのか?

 

実は違います。

 

鍼を響かせる場所は気の滞りのある場所に鍼の響きを伝えることです。

 

そのために鍼の角度や方向性を調整しながら鍼を進めます。

 

そして鍼を響かせていくわけですが、その響きが気の滞りをとらえ、さらにその先に響いていきます。

 

そして響きがたどり着いた所、それが「鍼の響いた場所」です。

 

これは、はっきりとは言えないのですが鍼が響いた場所というのは滞っていた気の出口のような感じかなと思っています。(現時点でそう思っているだけです。まだ、確証はありません)

 

その時、鍼を刺入した最初の経穴は入り口ということですね。

 

その鍼の響いた場所というのは切経でたどっていくわけですが、例えば脾経の太白に鍼をします。

 

その響きは心包経の大陵に伝わっていくのですが、その2穴の組み合わせって、脾虚の場合の本治法の基本配穴ですよね。

 

でもそれは69難に従って虚している経の親経を補うために大陵に鍼をするのであって、先に書いたように「出口」という捉え方はしていません。

 

これってどういうことなんだろうな、と考えるわけです。

 

いまは結論はでていません。

 

東洋医療技術研究会では鍼灸の治療体系をゼロの状態からもう一度つくっていこうとしています。その過程で先の疑問の答えも出せたらと思います。

 

岡部素道先生

前回の日記で書きましたが、鍼の響きは施術者しか感じない。

 

これってどういうことなんでしょう?

 

鍼の響きというものは、言い換えれば気の響きです。

 

つまり気というものは現象(見える世界)のものではなく、見えない世界のものであるために、現象を感知する通常の五感(視覚、触覚など)では感知できない、ということなのです。

 

ですから、五感以外の感覚が発達している方なら受け手でも鍼の響きを感じるのでしょうが、多くの方は感じることはないようです。

 

では施術者が感じるとはどういうことか?

 

「脈を診ていると患者の体の状態が自分の心我が事のように感じる」

 

岡部素道先生のお言葉です。

 

このように、気を診る感覚が発達してくると、患者の経絡の気の動きを感じるようになるのだと思います。

 

それは、もともと人が持っていた特殊な感覚なのかもしれませんし、先の日記に書いたように体の中を探知しようと意識を集中しているうちに獲得した能力かもしれません。

 

本当のところは分かりませんが、なんらかの感知能力は確かにあるようです。

 

そして程度の差はあれ、そういう能力がないと経絡の調整はシステムに頼らざるをえません。

 

そこが経絡治療の難しさだと思います。

 

経絡と漢方

経絡に気が響く感覚を術者側が、原初感覚を磨くことによってとらえていきます。

 

そして術者側の体の感覚を敏感にすることによって、ツボや気のルートを発見していったのだと仮定します。

 

そう仮定するとして、経絡や経穴の発見と同時に、そして経絡・経穴とは別に発見されたものがあるのです。

 

それは、「くすり」となる植物や鉱物などの薬効です。

それがのちの生薬(漢方薬)となります(仮定ですが)。

 

それらは実際に服用して効果を試していったのではないと思います。

 

精製剤(いわゆる現代医薬品)は実際に動物実験をしてデータをとり、人体で臨床データをとり医薬品としての認可をうけますよね。

 

かつての生薬はおそらく気に敏感体質となった人たちによって口に含んだだけ、はなはだしい場合は手に持っただけで効果を実感できたと思うのです。

 

つまり体に触れただけで、患部に響きを感じる、そして効果があるなしを判定していく。

これはツボの作用と同じです。

 

そこで鍼灸漢方同一論が生まれたのではないでしょうか。

 

とすると、漢方薬の成分分析をして適応症を決めることは本来の使用方法とは違うのかも知れませんね。

 

 西域講師の施術風景

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古代の望診法とは

古代に存在した「望診法」はダイレクトに気と経絡を見る技術だったのではないかと考えています。

3000年以上前の診察法の言葉に「望んで知る、これ神」という言葉があります。

この言葉は現代では、見ただけで診断ができるのは神様のようなものだ、という意味に解釈されています。

しかし、この言葉がつくられた(約3000年前)当時の「神」という漢字の意味は現代のような神様仏様のような意味ではなく、

神=自然(の気の流れ)という意味であったのです。

つまり、「望んで知る、これ神」の意味は、まず望診で気の流れを見ましょう、という意味であったのだと思います。

ですから、望診は診察手順の第1にくるのです。

四診合算という言葉があります。

望診、聞診、問診、切診の総合評価で証決定をしましょうという意味にとられています。

ですが、古代の望診のあり方を考えると、四診合算ではなくて、四診はその手順どおりに並んでいるだけです。

最初に望診で気の流れを把握しましょう、次に聞きましょう(聞診)、問いましょう(問診)、切(触診)してみましょう、と続いていくのす。

診察の手順としてまず望診ありきで、ここで患者の体のバランスが自然な状態(元の健康な状態)からどれくらい逸脱していて、どこに異常があり、どこが治療のポイントかを把握してしまいましょう、とうのが望診なのです。

ですから、望診というのは、神業だという意味ではなく、通常の診察手段として、最初に来るべきものなのだと考えております。

潜象界について

潜象界とは、現象界の対義語(造語)ですが、現象界は人がその五感で感じ取れる実体の世界のことです。それに対して、現象界とまったく同時に同じ空間に存在しながらも、五感では感じ取ることのできない世界を潜象界と言います。

潜象界はいわゆる「気の世界」であるとも言われています。

その潜象界からの情報は現象界で起こっている事象に先駆けて動き、その潜象界の動きが具現化されて、現象界で実体としての動きに繋がっているとされています。ただ、いまのところすべてが仮説であり、それを数値化、もしくは映像化して確認する方法がありません。

唯一、確認する方法があるとしたら、それは人本来がもっている原初感覚を呼び覚ますこと。

この原初感覚は気を実感として感知することが可能で、その原初感覚をもってすれば、潜象界での気の動きを捉えることができるからです。

その原初感覚を使った望診法が当ブログでいう「古伝の望診」なのです。

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