おそらく60年以上前のことだと思います。
脈診ははたして診断基準として有効なのか?という実験をした先生がおられました。
赤門鍼灸専門学校の講師をされていた先生で、のちに東北医大で星状神経節刺鍼の研究をされた先生です。
自らも経絡治療を学び、脈診もかなり練習されたようです。
そして・・・
当時の脈診の大家と言われた有名な先生を4人集めて、同じ患者さんに対して、それぞれに脈で証をたててもらいました。
結果、すべて違う証(病名のようなもの)がたち、何度やっても一致しなかったので、脈診は再現性なし、という結論に達したらしいです。
さて、皆さんはどう思われますか?
まず、私は脈が証決定のすべてではない、と思っています。
医師だって、たった1つの臨床データから診断しなさいと言われたら、てんでバラバラな診断がたつと思いませんか?
例えば、熱が39度あります、さて、考えられる病名は?みたいな。
次に脈診に限らず、東洋医学の診察、診断はその人の生命力の診断ですから非常にファジーであるということ。
そのあたりが東洋医学の難しさでもあり、インチキ視される原因でもあるのですが。
東洋医学はとらえどころの無い生命力を判断するファジーな医学。
そして東洋医学の鍼灸術は非常に統計学的な要素が強い。
現時点では科学的に観察不可能な経絡の変動を身体の微妙な変化から膨大な統計をとって、そこからなんとか捉えてみようとする医学なんです。
また、その観察対象が数字ではなく、生命現象なので観察方法が一元論的なものにならざるを得ません。
それは観察者と対象物に差があってはできないことなんです。
ですが、観察者は人間ですから、どうしても表現方法に差がでてきます。
同じ状態を観察し、同じ現象を捉えていても違う表現をするかもしれません。
だから違う証が立つし、正反対の施術をしていることもある。
経絡の真実は自分自身で見極めるしかありません。
経絡は観察者によって違う見せ方をするのではないか
私はこう考えています。
まず、脈は気が変化したものであって、気の動きそのものではない、ということ。
そして経絡、気というものは観察者(ここでは術者)によって、それぞれ違う姿を見せるのではないか、ということです。
それは術者の経験や学んできた施術方法にもよるのだと考えています。
でなければ、正反対の施術をして効果がでるはずがありません。
もちろん、これは仮説、仮定の話ですので、これからの研究によってはまた考えが変わるかもしれません。
そのときは、またご報告させていただきます。
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