どうやったら患者さんを治せるんだろう?
そんな漠然とした視点から、治療技術についての考えを述べさせていただきたいと思います。
私は、鍼灸師、柔道整復師として開業させていただいております。
現在は「経絡の調整」「気滞の解消」をテーマに勉強を続けております。
簡単に経緯を申し上げます。
鍼灸学校を卒業後、現代医学の物理的な治療法に興味を持てなかった私は、東洋医学的な思想や治療技術に魅力を感じ、まず中医学を学びました。
東洋思想の基礎から教わり、たいへん興味を持つ事はできたのですが、実際の治療技法に関しては中医学の迷路(※)に入り込んでしまい挫折。
※中医学の迷路について
東洋医学というのは陰陽五行論という仮説のうえに成り立っている医療です。
根幹をなす理論がすべて仮説(たとえ話の域をでない)というところが問題です。
たとえば、手にペンをもっていたとします。手を離すとペンは床に落ちます。
ペンが落ちる、これは事実ですがこれをいろいろな表現方法をもちいて説明できます。
ペンが落ちる、ペンが床に向かう。床とペンがくっつく、など。
すべて同じ事実を表現しているのですが引力、重力の理論がみつかっていないという前提だと、からそれをいろいろな言い方(仮設)で説明することになります。
そして、そのたとえ話や仮説をさらに組み合わせて複雑化してしまったのが東洋医学です。ひとつひとつは事実をいっているのでしょうが、その仮説を組み合わせて、さらに新しい仮説をつくりだしたら、もうなにが事実かわからなくなってしまいます。
これが東洋医学(中医学)迷路です。
その後、〇〇はり医学会の経絡治療というシンプルな技術体系にひかれ、経絡の気の調整技術を学びました。
気が虚している経絡を補えば(気を通してやれば)病気は治る!という分かりやすい医学でした。
ですがここで長年の疑問が噴出します。
経絡治療なんてもう止めた!
気がいたる(気が補えたら)のを度(限度)として抜鍼しろと言うが、気が満ちてくるとう感覚がさっぱり分からない。
他の人は「気が満ちました!」と言って抜針しているが、それって思い込みなんじゃないとか思いながら・・。
そもそも適応側(治療ポイント)の選定ができない。
原則に従うか、カンに頼るしかない(だって、気がわからないから)。そんな疑問を抱えたまま、鍼灸から一時離れてしまいます。
柔道整復やマッサージ、整体の技法を学ぶ事にしたのです。
物理的に体を真っ直ぐ(骨格の矯正)にすれば治るだろう(施術を受けると、とっても気持ちいいし)。という単純な発想からでした。
ですが、すぐに壁に突き当たりました。
矯正しても治らない。それどころか悪化する人もいる。
それは技術がないから(へただから)?
診断が間違っているから?
ていうか、真っ直ぐな関節がいいのなら・・・全身人工関節にしちゃえばいいじゃん?
今思えばなんて乱暴な発想でしょうか(笑)
もちろん全身人工関節なんて実現しませんし、したとしても痛みからは開放されないでしょう。
生体においては、全身の複雑な構造が微妙な「ゆらぎ」をともないながら、それこそ微妙なバランスを保っているのです。
物理的に単純に真っ直ぐがいいわけではありません。
「PST療法」という整体の一流派も学んでみました。非常にソフトな整体です。
(注)PST療法、自然形体、リセット療法はまったく同じ療法です。
そこで得たことは、私の整体に対するイメージとは違うものでした。
世紀の大実験!?
そのソフトな整体の勉強会で、次のような実験をしました。
腰が痛いという被験者(模擬患者)にたいして、一応の歪みの診断を解説し伏臥位で寝ていただきます。そして痛みをとる魔法の小石を腰にのせておきます。
するとどうでしょう、数分後には痛みが軽減しているのです!
この魔法の小石を販売すれば大儲けです。
ただ、問題はこの小石は実験前に道端で拾ってきた、ただの石だということです。
つまり・・・詐欺ですね(笑)
では、どうしてこの小石で痛みがとれるのでしょう?
じつは簡単な診断を解説する、というところがポイントです。
それを聞いた被験者は、寝ている間に自分でも無意識のうちに自己矯正を始めてしまうのです。
それはどういうことか?
歪むとはどういうことか?
体が歪む、骨格が歪む、と言っても骨の形自体が変形するわけではありません。
歪みとは骨と骨どうしの関係性の異常です。
言い換えれば、骨をつなぐ軟部組織(筋・腱・靱帯など)の機能異常です。
そして、それらの軟部組織を統制しているのは神経系、脳です。
そう考えると、関節の歪みからくる痛みに芳香療法やホメオパシー(同種療法)が効果を発揮する理由がわかります。
また、見た目だけを整えても(真っ直ぐに矯正しても)治らない理由もわかります。
なんらかの理由で脳のスイッチがONになって初めて、矯正がはじまるのです。
先の小石はそのきっかけにすぎません。
でもどうやったらそのスイッチが切り替わるのか?
整体について調べなおしました。さまざまな整体技法も訪ねてみました。しかし実力のある先生ほど、骨格の矯正についてうるさく言わないのです。
アメリカの有名なオステオパス、ロバートフルフォード先生はその著書の中で治療とは生体エネルギーのブロックを取り除いてやる事だと書かれています。骨格の矯正につては殆ど触れていません。
オステオパシーの創始者スティルの文献を読んでも骨格の矯正のことより、これって気の事を書いているんじゃないのか?というような表現がいくつもでてきます。
医王会の増永先生も、経絡指圧の遠藤先生もマッサージで筋肉をほぐす事より経絡と気の調整について繰り返し説明されています。
整復・整体についてのイメージが変わりつつありました。
キーワードが頭の中をグルグルめぐります。
脳神経系? 気? 経絡? 生体エネルギー? 集合的無意識領域?etc・・・
そんなとき熊坂護先生(大東流合気柔術系の整復術)と出会いました。
そこからです、古流整体の見の技法と出会い、気滞を取るという考え方に出会い、そして有川先生へとたどり着くのです。
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